アメリカで生活を始めると、車はほぼ生活必需品になります。ところが日本とは交通ルールが違い、赤信号でも右折できる交差点や、四方すべてに一時停止の標識が立つ交差点など、最初は判断に迷う場面が次々に出てきます。さらにアメリカでは6人に1人のドライバーが無保険という調査結果もあり、事故は決して他人事ではありません。海凪も3年間の研究留学中に、交差点で対向車と衝突する事故を経験しました。幸いけが人は出なかったものの、そこから修理・保険・車の売却まで、半年近く尾を引くことになったのです。修理費そのものは保険でまかなえたものの、手続きに費やした時間と、事故歴がついた車の下取り価格の下落まで含めると、損失は決して小さくありませんでした。
- 事故を起こしたときの最初の一手
- 英語での警察や保険会社とのやり取り
- 日本と違う交通ルールへの戸惑い
- 相手が無保険だった場合の負担
- 修理費や下取り価格への影響
この記事では、海凪が実際に遭った事故の一部始終を軸にしながら、アメリカで交通事故にあったときに何をどの順番で行えばよいのかを整理しました。体験談だけでは州や状況によって当てはまらない部分もあるため、公的機関や業界団体が公表している最新のデータや制度も加えています。
- アメリカの交通事故の発生規模と無保険ドライバーの割合
- 事故直後にすべき5つの対応
- 警察を呼ぶかどうかの判断基準と事故報告書の出し方
- 保険会社とのやり取りで実際にかかった費用
- 修理歴が下取り価格に与える影響
- 州によって違う過失と補償の仕組み
実際に事故に遭って初めて分かったことばかりでした。同じ思いをする方が少しでも減るように、包み隠さずお伝えします!
なお、この事故を含めた留学中のトラブル全般については、アメリカ留学中に経験した生活トラブル9選でまとめています。あわせてご覧ください。
アメリカの交通事故の実態

まずは、自分が置かれている環境がどれくらいのリスクなのかを数字で押さえておきましょう。アメリカは日本と比べて運転する距離が長く、事故の絶対数も多い国です。そのうえで日本人にとって厄介なのは、相手が保険に入っていない可能性が日本よりはるかに高いという点になります。ここでは死者数・無保険率・ひき逃げの3つのデータと、日本人が戸惑いやすい交通ルールを確認します。
年間3万9254人という死者数
アメリカ運輸省道路交通安全局(NHTSA)によると、2024年に交通事故で亡くなった人は3万9254人でした。2023年の4万1025人から4.3%減ってはいるものの、日本の年間交通事故死者数と比べるとけた違いに多い水準です。
走行距離1億マイルあたりの死者数も1.19人と、日本より高くなっています。これは一人あたりの走行距離が長いことに加え、高速道路の制限速度が高いことや、市街地でも片側3車線の道路が珍しくないことが背景にあります。
6人に1人が無保険という現実
保険研究評議会(IRC)が2023年のデータをもとにまとめた調査では、アメリカのドライバーの15.4%が無保険でした。これは調査開始以来もっとも高い水準です。さらに補償額が不足している過少保険のドライバーが18.0%いるため、両者を合わせると3人に1人が十分な保険を持っていない計算になります。
州による差も大きく、ミシシッピ州は28.2%、ニューメキシコ州は24.1%と、4人に1人以上が無保険という地域もあります。つまり自分がどれだけ安全に運転していても、相手から賠償を受けられないケースが一定の確率で起こりうるということです。
ひき逃げの多さ
NHTSAのデータでは、2023年にひき逃げ事故で亡くなった人は2872人にのぼります。2022年には2972人と過去最多を記録しました。アメリカ自動車協会の調査では、ひき逃げの被害者の7割以上を歩行者と自転車が占めています。
海凪の事故でも、相手は情報交換が終わるとすぐに立ち去ってしまいました。その場を離れられてしまうと後から立証するのが一気に難しくなるため、写真と記録をその場で残すことが決定的に重要になります。
日本人が戸惑いやすい交通ルール
アメリカの交通ルールには、日本の感覚のままだと事故につながりやすいものがあります。代表的なものを挙げておきます。
- 赤信号での右折(Right turn on red)
- 四方向すべてが一時停止のFour way stop
- スクールバス停車中の追い越し禁止
- 緊急車両接近時の路肩退避
- 州をまたぐと変わる制限速度と罰則
いずれも標識や州法で細かく決まっており、知らずに違反すると過失割合に響きます。運転を始める前の準備についてはアメリカでの運転に挑戦!国際免許証の取得手続きと注意点とアメリカの運転免許を取ろうも参考にしてください。
赤信号の右折は便利なルールですが、海凪はこれが原因で事故に遭いました…。
実体験でわかる事故の状況

ここからは海凪が実際に遭った事故を振り返ります。一般的な手順の解説だけでは伝わりにくい、現場で何が起きて何に困るのかを具体的に共有します。結論から言えば、優先権がこちらにあっても事故は起きるということです。相手の動きが予測と違えば、ルール上正しくても衝突は避けられません。事故の状況、日本と違うルール、実際の損傷、そして相手の対応の順に見ていきます。
交差点で起きた衝突
事故が起きたのは、片側2車線の道路が交わる交差点でした。海凪は青信号に左折の矢印が出ている状態で左折しようとしていました。日本でいう右折にあたる動きです。
そこへ対向車が右折してきました。しかも予想外だったのは、こちらの走行レーンの奥側ではなく手前側の車線に入ってきたことです。ブレーキが間に合わず、海凪の車の右前方と相手の車の左前方がぶつかりました。
赤信号の右折という落とし穴
このとき対向車の信号は赤でした。アメリカでは赤信号での右折が認められている交差点が多く、相手はそのルールに従って曲がってきたことになります。
ただし赤信号での右折は「一時停止したうえで」「他の車の進行を妨げない場合に限り」認められている行為です。矢印信号で左折していた海凪に優先権がありました。ルール上は認められている動作でも、条件を満たしていなければ違反になるという点が、このルールの難しいところです。
実際の車の損傷
衝撃自体は軽く、同乗していた子どもたちを含め全員がシートベルトを着用していたため、むち打ちもなく無傷で済みました。ただし車の損傷は見た目以上でした。
凹み自体は小さいのですが、フロント・サイド・ライトの3か所にダメージが及んでいました。外から見た印象と修理費は必ずしも一致しません。この後の見積もりで、その差を思い知ることになります。
相手がその場を去った理由
事故の相手は高齢の男性でした。お互いの保険証を見せ合い、写真と記録を取ったのですが、それが済むと相手はさっさと立ち去ってしまいました。
- 急いでいた可能性
- 分が悪いと判断した可能性
- 警察を待つ習慣がない可能性
理由は今もわかりません。ただ確かなのは、相手が立ち去った後に追加で情報を取ることはほぼ不可能だということです。だからこそ、次に説明する事故直後の対応が生きてきます。
事故直後にすべき5つの対応

事故の直後は誰もが動揺するものです。だからこそ、やるべきことを順番として覚えておくと動けます。アメリカの保険会社各社が案内している手順は、細部の違いはあっても大枠は共通しています。安全確保・通報・情報交換・記録・保険会社への連絡の5つです。ここでは各ステップで具体的に何をするのか、そして海凪が実際にできたこととできなかったことを添えて説明します。
STEP1 安全確保と負傷の確認
最初にすることは、people first の原則どおり人の安全確認です。自分と同乗者にけががないかを確かめ、次に相手の状態を確認します。
車が動かせる状態なら、後続車に追突されないよう路肩や安全な場所へ寄せます。ハザードランプを点け、必要に応じて発炎筒や三角表示板を出しましょう。現場からは離れず、安全な位置に移動するだけというのが重要なポイントです。
STEP2 911への通報
けが人がいる場合や車が動かせない場合は、迷わず911に電話します。英語に自信がなくても、場所と状況を伝えれば対応してもらえます。
- 現在地(交差点名や最寄りの住所)
- けが人の有無と人数
- 車が動かせるかどうか
- 自分の名前と電話番号
軽微な物損だけの場合、後述するように警察が現場に来ないこともあります。それでも通報した記録が残ること自体に意味がありますので、まずは連絡しておきましょう。
STEP3 相手との情報交換
警察を待つ間、あるいは警察が来ない場合は、相手と情報を交換します。アメリカの保険各社が共通して挙げている項目は次のとおりです。
- 氏名と連絡先
- 保険会社名と証券番号
- 運転免許証の番号と発行州
- ナンバープレート番号
- 車のメーカー・車種・色
- 目撃者がいれば連絡先
このときどちらが悪いかという話はその場でしないのが鉄則です。過失の判断は保険会社と警察が行うもので、現場での発言が後から不利に働くことがあります。
STEP4 現場の記録
写真は撮りすぎるくらいでちょうどよいと感じました。損傷部分のアップだけでなく、車全体、両車の位置関係、信号や標識、路面の状態まで押さえておきます。
海凪の場合、相手がすぐ立ち去ったため、その場で撮った写真と書き取ったメモが唯一の資料になりました。後から取り直せない情報だという意識を持っておくと、撮り漏らしが減ります。
スマホの充電が切れていて撮れなかった、という事態は避けたいところです。現地でのスマホ回線については海外留学時のスマホはどうする?でも解説しています。
STEP5 保険会社への連絡
現場を離れたら、できるだけ早く自分の保険会社に連絡します。多くの会社はオンラインでの受付に対応しており、24時間いつでも申請できます。
- 事故の日時と場所
- 相手の氏名と保険情報
- 事故の状況の説明
- けがの有無
- 撮影した写真
なお相手側の保険会社から先に連絡が来ることもあります。その場合もまずは自分の保険会社に相談してから応じるのが安全です。詳しくは後の章で触れます。
警察対応と事故報告書の提出

日本の感覚だと、事故が起きれば警察が来るのが当たり前に思えます。ところがアメリカでは、けが人がおらず損傷も軽い場合、警察が現場に来ないという選択肢を提示されることがあります。これは日本人がもっとも戸惑うポイントのひとつです。ここでは警察が来ないケースの背景と、それでも呼んだ方がよい場面、そして州への事故報告書の出し方を整理します。警察が来るかどうかで、その後の手続きの重みが変わってくるためです。
警察が来ないケース
海凪が911に電話したとき、警察から返ってきたのは「現場に行く必要はありますか」という問いかけでした。同乗者は無傷で、車の損傷も軽微だったため、事件性が低いと判断されたのだと思います。
そのとき子どもが友人一家と遊ぶ約束をしており、時間も迫っていました。そのため海凪は警察を呼ぶのを断ったのですが、この判断は後から振り返ると軽率だったと感じています。
それでも呼んだ方がよい場面
次のような状況では、多少時間を取られても警察に来てもらう価値があります。
- 相手が保険証の提示を渋る場合
- 相手の主張と自分の認識が食い違う場合
- 少しでも痛みや違和感がある場合
- 相手が立ち去ろうとしている場合
- 契約を翌年以降も継続する予定がある場合
警察の作成した報告書は第三者による客観的な記録として扱われます。過失の判断が割れたときに、これがあるかないかで結論が変わる可能性があるためです。
州への事故報告の基準
警察が来なかった場合でも、州への事故報告書は提出しておきましょう。多くの州ではけが人や死者が出た場合、または物損が一定額を超えた場合に報告義務が定められています。
| 州 | 報告が必要になる基準 | 期限と書式 |
|---|---|---|
| カリフォルニア | 負傷・死亡または物損1000ドル超 | 10日以内・SR-1 |
| ニューヨーク | 負傷・死亡または物損1000ドル超 | 10日以内・MV-104 |
| その他の州 | 州ごとに金額と期限が異なる | 州のDMVやDOTのサイトで確認 |
書式は州のDMVやDOTのウェブサイトに掲載されています。すべて英語ですが、内容は複雑ではありません。翻訳ツールを使いながら入力すれば十分に対応できます。
記入項目は事故の日時・場所・車両・けがの有無が中心で、落ち着いて読めば書けるレベルでした!
提出しなかった場合のリスク
報告書を出さないと、相手だけが自分に都合のよい内容を提出する可能性があります。その場合、相手の主張だけが記録として残ってしまうことになりかねません。
保険会社からも報告書を出したかどうかは確認されます。手間はかかりますが、自分の主張を残す手段として提出しておく方が安全でしょう。
保険会社とのやり取りの流れ

事故対応でもっとも時間を取られるのが保険会社とのやり取りです。海凪が契約していたのはHartfordという保険会社で、結果だけを見れば修理費は全額カバーされ自己負担はゼロでした。ただしそこに至るまでには、レスポンスの遅さや相手側からの連絡など、いくつもの山がありました。実際の流れと金額を順に見ていきます。免責金額の扱いやレンタカーの上限など、契約前に知っておきたい論点も一緒に整理しました。
自分側の保険会社への連絡
Hartfordはオンラインでの申請を受け付けており、フォームから事故の内容を送信できました。申請後はメールでのやり取りと電話確認が中心になります。
率直に言えばレスポンスは遅めでした。ただし対応そのものは丁寧で、手順に沿って進めば滞ることはありません。急ぐなら催促の連絡を入れる方が確実というのが実感です。
免責金額と修理費の支払い
当初は免責金額(deductible)を自己負担する必要があると説明されていました。ところが調査が進むと、こちらに非がないと認定されたようで、全額が返金対象になったのです。
実際の見積書がこちらです。部品代や塗装代を含めた総額は3400.59ドルで、Customer Payはゼロ、Insurance Payが全額という形になりました。一時的にも立て替えることなく修理できたのは大きな助けでした。
2024年2月のレートだと50万円を超える金額です。これを自己負担していたらと思うとぞっとします…。
レンタカー費用の上限
修理期間中のレンタカー費用も補償の対象でした。ただし1日あたりの上限が100ドル程度と決まっており、ここに落とし穴があります。
家族全員が乗れるサイズの車を借りると、この上限には収まりません。超過分に日数を掛けた金額は自己負担となるため、家族帯同の場合は想定より出費が膨らみます。
相手側の保険会社からの連絡
事故から少し経って、相手側の保険会社からも連絡が来ました。最初は郵便でしたが、記されていた連絡先は電話番号だけでした。
気は進みませんでしたが電話でやり取りをしたところ、証拠がない限り支払いは難しいという説明を受けました。裏取りのために本人へ直接連絡するのが手順なのだと理解しています。不安な場合は自分の保険会社に相談してから応じましょう。
日本語の代理店を挟むかどうか
保険会社とのやり取り自体は英語で直接行いましたが、返事の催促などでは日本語の代理店にも入ってもらいました。
- 催促がプレッシャーになり手続きが進みやすい
- 英語での交渉に不安があっても任せられる
- 第三者を挟むぶん時間がかかる可能性
- 契約時の保険料が安くなっている可能性
どちらのメリットが大きいかは、いまだに判断できていません。英語に不安があるうちは代理店経由、慣れてきたら直接という形で、自分の語学力に合わせて使い分けるのが現実的でしょう。
修理と車の価値への影響

修理が終われば一件落着かというと、そうではありません。アメリカでは事故歴が車両履歴として記録に残り、売却時の下取り価格に直接跳ね返ってきます。海凪の場合、この目に見えにくい損失が修理費よりも重くのしかかりました。修理工場の選び方から、実際の費用、そして下取り価格への影響までを見ていきます。修理が終わっても損失は続くという点が、この章でいちばんお伝えしたいことです。
修理工場の選び方
修理は近所の個人経営の修理店に依頼しました。大手ディーラーの修理は予約に時間がかかるうえ、別件で対応してもらったときの印象がよくなかったためです。
注意したいのは、事故修理と通常のメンテナンスは専門分野が異なるという点です。普段お世話になっている整備工場が事故修理も得意とは限らないため、探すのには少し苦労しました。結果としては対応も早く、車はきれいに直っています。
実際にかかった修理費用
見た目には軽症だと思っていたのですが、フロント・サイド・バンパーのいずれにもダメージがあり、総額は3400ドルを超えました。
| 項目 | 内訳 |
|---|---|
| 部品代 | 966.30ドル |
| 板金の工賃 | 919.80ドル(12.6時間) |
| 塗装の工賃 | 584.00ドル(8.0時間) |
| 塗料など | 400.00ドル |
| その他 | 338.00ドル |
| 税込の総額 | 3400.59ドル |
工賃が1時間あたり73ドルという水準は、日本の感覚よりも高めです。小さな凹みでも複数箇所に及ぶと一気に高額になることがよくわかります。
事故歴による下取り価格の下落
事故処理の際には車両識別番号(VINナンバー)の提供が必要になります。この番号を通じて事故歴が記録され、売却時の査定に影響します。
海凪が帰国前にCarvanaで見積もりを取ったところ、事故前なら5000ドルから6000ドルだった買取価格が2000ドルまで下がりました。日本円にして40万円から50万円の損失です。
業界のデータでも、事故歴のある車は同等の無事故車と比べて10%から33%安く取引されるとされています。Kelley Blue Bookの分析では10%から25%の下落幅が示されており、海凪のケースはそれを大きく上回る結果でした。
修理費より下取り価格の下落の方が痛かった、というのが正直な感想です。
全損と判定される基準
損傷が大きい場合は、修理ではなく全損(total loss)と判定されます。多くの州では修理費が車の時価の70%から75%を超えると全損扱いになります。
古い車ほど時価が低いため、見た目には直せそうな損傷でも全損とされることがあります。その場合は時価相当額が支払われ、車は保険会社に引き取られる流れです。
帰国時の車の売却については研究留学からの帰国時チェックリストでも触れています。売却のタイミングと合わせて確認しておくと安心です。
州ごとに違う過失と補償の制度

アメリカの自動車保険でもっとも理解しにくいのが、州によって制度そのものが違うという点です。どちらの保険が治療費を払うのか、過失が何割なら賠償を受けられるのか、最低限どれだけの補償に入る義務があるのか。これらがすべて州法で決まっています。引っ越しで州をまたぐ場合は特に注意が必要でしょう。ここではノーフォルト制と過失割合のルール、最低補償額、そして無保険への備えの4点を押さえます。
ノーフォルト州とフォルト州
アメリカの州は、事故の治療費を誰が払うかで2種類に分かれています。ノーフォルト州では、過失の有無にかかわらず自分の人身傷害補償(PIP)から自分の治療費が支払われます。
一方フォルト州では、けがをした側が相手の賠償責任保険に請求するのが基本です。現在ノーフォルト制を採用しているのは次の12州になります。
- フロリダ・ハワイ・カンザス・ケンタッキー
- マサチューセッツ・ミシガン・ミネソタ
- ニュージャージー・ニューヨーク
- ノースダコタ・ペンシルベニア・ユタ
残る38州とワシントンD.C.はフォルト州です。自分の住む州がどちらなのかは、契約前に確認しておきましょう。
過失割合を決める4つのルール
どちらにも非がある事故では、過失割合によって受け取れる金額が変わります。アメリカの州が採用しているルールは大きく4種類です。
| ルール | 内容 | 採用州の例 |
|---|---|---|
| 純粋比較過失 | 自分の過失分だけ減額され請求は可能 | カリフォルニア・ニューヨーク |
| 修正比較過失50% | 自分の過失が50%以上だと請求不可 | コロラド・メイン |
| 修正比較過失51% | 自分の過失が51%以上だと請求不可 | テキサス・イリノイ |
| 寄与過失 | 1%でも過失があると一切請求できない | アラバマ・メリーランド・バージニア |
特に注意したいのが寄与過失を採用している州です。わずかでも自分に落ち度があると賠償を受けられなくなります。アラバマ州・メリーランド州・ノースカロライナ州・バージニア州とワシントンD.C.が該当します。
州ごとに違う最低補償額
賠償責任保険の最低限度額も州ごとに決まっており、近年は引き上げが続いています。カリフォルニア州では2025年1月1日から、1967年以来はじめての引き上げが実施されました。
| 州 | 最低補償額 | 備考 |
|---|---|---|
| カリフォルニア | 30/60/15 | 2025年1月に15/30/5から引き上げ |
| ニュージャージー | 35/70/25 | 2026年1月から適用 |
| ノースカロライナ | 50/100/50 | 無保険・過少保険補償も同額で義務化 |
ただし最低限度額はあくまで最低ラインです。アメリカの医療費や修理費の水準を考えると、この金額では足りなくなる場面が十分に想定されます。
無保険ドライバーへの備え
相手が無保険だった場合に自分を守るのが、無保険車傷害補償(UM)と過少保険車傷害補償(UIM)です。
22州とワシントンD.C.ではこの補償の付帯が義務づけられていますが、義務のない州でも加入しておく価値は高い補償だと考えています。6人に1人が無保険という現実を踏まえれば、決して過剰な備えではありません。
相手から取れないリスクは、自分の保険でしか埋められません。契約内容を一度見直してみてください!
事故に備えるための準備

ここまで見てきたとおり、事故は起きてからでは選べる手が限られます。逆に言えば、事前の準備しだいで被害の大きさは大きく変わります。海凪自身、保険の内容をきちんと理解していたおかげで救われた部分がありました。契約時に確認すべき補償、車に積んでおくもの、押さえておきたいルール、そして英語への備えの4点にまとめます。渡米前でも渡米後でも、今日から手をつけられる内容です。
契約時に確認したい補償内容
保険料の安さだけで選ぶと、いざというときに補償が足りません。契約前に次の項目を確認しておきましょう。
- 対人・対物の補償上限
- 無保険車傷害補償の有無
- 免責金額の設定
- レンタカー費用の1日あたり上限
- ロードサービスの範囲
特にレンタカーの上限額は家族構成に合わせて選ぶことをおすすめします。海凪はここで想定外の出費が発生しました。
車に常備しておくもの
事故の現場で困らないよう、車内に置いておくと役立つものがあります。
- 保険証と登録証のコピー
- スマホの充電ケーブルとモバイルバッテリー
- ペンとメモ帳
- 懐中電灯と三角表示板
- 緊急連絡先を書いたカード
スマホが使えれば大半は代替できますが、充電切れや破損の可能性を考えると、紙の控えが一枚あるだけで安心感が違います。
アメリカ特有の交通ルールの把握
事故を防ぐという意味では、ルールの理解がもっとも効果的です。特に赤信号での右折とFour way stopは、日本にない仕組みなので意識して覚えましょう。
免許の取得過程で州のドライバーズマニュアルを読むことになりますが、実際の運転で迷った場面を後から読み返すとより身につきます。取得の流れはアメリカの運転免許を取ろうにまとめています。
英語に不安がある場合の備え
事故直後のやり取りは、平常心でも簡単ではありません。日本語で相談できる窓口を事前に把握しておくと、心理的な負担が軽くなります。
- 日本語対応の保険代理店
- 最寄りの日本国総領事館の邦人援護窓口
- 勤務先や大学の国際部門
- 翻訳アプリと定型文の準備
領事館は法律相談そのものは行いませんが、現地の制度や手続きについて助言を受けられます。渡米前の準備については渡米前に日本で準備して役に立ったこと5選も参考になるはずです。
アメリカの交通事故のよくある質問

最後に、アメリカでの交通事故についてよく聞かれる疑問をまとめました。海凪自身が事故の前後で調べたことや、実際に迷った点が中心です。州によって答えが変わる項目もあるため、最終的には居住州の規定と加入している保険の約款を確認してください。事故直後・保険と費用・手続きと帰国の3つに分けて整理しました。同じ場面で迷ったときの手がかりとして使ってください。
事故直後に関する疑問
- Q警察が来ないと言われたらどうすればよいですか
- A
その場で相手の情報と現場の写真を必ず取得し、後日あらためて州への事故報告書を提出してください。相手が保険証の提示を渋る、主張が食い違う、少しでも痛みがあるといった場合は、時間がかかっても現場に来てもらうよう依頼した方が安全です。
- Q英語がうまく話せなくても911に電話して大丈夫ですか
- A
問題ありません。場所とけが人の有無、車が動かせるかどうかを伝えれば対応してもらえます。単語だけでも通じますので、まずは電話をかけることを優先してください。
- Qその場で相手と示談してもよいですか
- A
おすすめできません。後から痛みが出たり、修理費が想定を大きく超えたりすることがあります。過失の判断は保険会社と警察に任せ、現場ではどちらが悪いという話をしないのが鉄則です。
保険と費用に関する疑問
- Q相手が無保険だった場合はどうなりますか
- A
自分が加入している無保険車傷害補償(UM)から支払いを受けることになります。アメリカのドライバーの15.4%が無保険というデータがあるため、義務のない州でも付帯しておくことを強くおすすめします。
- Q免責金額は必ず自己負担になりますか
- A
こちらに過失がないと認定されれば、返金されるケースがあります。海凪の場合も当初は自己負担と説明されましたが、最終的には修理費の全額が保険で支払われました。
- Q修理中のレンタカー代はすべて補償されますか
- A
1日あたりの上限が設定されているのが一般的で、海凪の契約では100ドル程度でした。家族が乗れるサイズの車を借りると上限を超えることが多く、超過分は自己負担になります。
手続きと帰国に関する疑問
- Q事故報告書はいつまでに出す必要がありますか
- A
州によって異なりますが、カリフォルニア州とニューヨーク州では10日以内と定められています。物損が1000ドルを超える場合や負傷者が出た場合が対象です。居住州のDMVやDOTのウェブサイトで書式と期限を確認してください。
- Q事故歴があると車は売れなくなりますか
- A
売れなくなることはありませんが、査定額は確実に下がります。事故歴のある車は同等の無事故車より10%から33%安く取引されるとされ、海凪のケースでは買取見積もりが5000ドル台から2000ドルまで下がりました。
- Q帰国が近い場合でも保険の等級は気にすべきですか
- A
翌年以降も契約を続けるなら気にする価値があります。過失が認められると翌年の保険料が上がるためです。海凪は留学最終年だったため実際の影響はありませんでしたが、継続予定なら警察の報告書を残しておく意味は大きくなります。
まとめ:初動と備えが損失を左右する

アメリカでの交通事故は、起きてしまえば時間もお金も確実に奪われます。海凪の場合、修理費は保険で全額カバーされたものの、レンタカーの超過分、修理店を探す手間、保険会社とのやり取り、そして下取り価格の下落まで含めると、決して小さくない損失になりました。それでも保険に助けられた部分が圧倒的に大きかったというのが結論です。この記事の要点をあらためて振り返っておきましょう。
- アメリカの交通事故死者は年間3万9254人
- ドライバーの15.4%が無保険という現実
- 事故直後は安全確保から保険会社連絡までの5ステップ
- 警察が来なくても州への事故報告書は提出
- 免責金額は過失なしと認定されれば返金の可能性
- レンタカー費用には1日あたりの上限
- 事故歴で下取り価格は10%から33%下落
- 無保険車傷害補償は義務のない州でも付帯を推奨
いちばん伝えたいのは、事故に遭わないことが最善だということです。そのうえで万一に備えるなら、契約時に補償内容を確認し、現場での5ステップを頭に入れておくだけで結果は変わります。
備えがあれば、いざというときに慌てずに動けます。この記事が、その備えのきっかけになればうれしいです!
アメリカ生活で遭遇するトラブルは交通事故だけではありません。海凪が3年間で経験した住宅・病院・詐欺などのトラブルはアメリカ留学中に経験した生活トラブル9選にまとめています。渡米前の心構えとしてぜひ目を通してみてください。
運転を始める前の免許の準備はアメリカの運転免許を取ろうとアメリカでの運転に挑戦!国際免許証の取得手続きが、生活費全体の見通しはアメリカの生活費事情が参考になります。


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