留学の準備をし始めると「住民票はどうしたらいいの?」という疑問が出てきます。本記事では留学する際の住民票の取り扱いとその影響について詳しく解説します。住民票を残すこと・抜くことによるメリットとデメリットを理解し、ご自身にとってより良い選択をしましょう。
3年間アメリカ留学した海凪が留学時の住民票について解説します!
留学における住民票の扱い:住民票を抜くべきか?抜かざるべきか?
留学をするときは国外滞在中に住民票を残すかどうか決めなければなりません。住民票は日本国内での法的な住所を示す大切な書類であり、留学中でも一定の役割を持たせることが可能です。
しかし、留学中に住民票が必須かどうかは、個々の状況によって異なります。住民票を残すということは、国外であれば本来受けることのない国民年金・健康保険の支払い義務が生じる一方でメリットを享受できる場合もあり、個々にどうすべきかを判断する必要があります。
住民票が留学生活に与える影響
住民票は居住地を証明する公的文書であり、国内の行政手続きにおいて必要な書類です。ただし、海外の住所登録と日本の住民票制度は直接的な関係はありません。
そのため、留学先での住所登録が日本での行政サービスに影響を与えることはありません。反対に日本の住民票があることで海外で不利益を受けることも(日本での収入がなければ)ありません。
日本の住民票がある場合、留学生は一時帰国時も国内居住者と同じ行政サービスを受ける権利を持ちます。一方、住民票を転出届によって除いた場合、国民健康保険や国民年金の免除が認められ、経済的負担を軽減できます。
住民票を残すか抜くかは留学期間、利用可能な行政サービス、経済的負担など、多岐にわたる要因を総合的に検討する必要があります。
海外転出届とは:住民票を「除票」扱いに
海外転出届とは、日本の居住地から国外に移住、または長期間滞在する際に必要な届出です。一般的に、1年以上の海外滞在を予定している場合に届け出る必要があるとされます。日本国籍の方だけでなく、日本で住民登録されている外国籍の方も届出の対象となります。
1年未満の人については海外転出届の提出は求められませんが、任意で提出することは可能です。
留学時に住民票を抜くメリット
留学時に住民票を抜くメリットは以下のとおりです。
- 国民健康保険料の支払いが不要になる
- 国民年金保険料の支払いが不要になる
- 住民税の支払いが不要になる
国民健康保険料の支払いが不要になる
留学時に住民票を抜くと、国民健康保険料の支払いが免除されます。国内に住所がないとみなされ、国民健康保険からの脱退が認められるからです。住民票を抜く際には、市区町村の役場に海外転出届を提出してください。
自治体によって手続きの内容や必要書類が若干異なるため、各自治体の公式ホームページを事前に確認しておきましょう。
留学から帰国した後は、再度国民健康保険に加入する手続きが必要になります。帰国後すぐに加入手続きを行ってください。手続きを忘れず、適切に管理することが重要です。
参考:江戸川区公式ホームページ
国民年金保険料の支払いが不要になる
国外転出届を出して住民票を抜くと保険料の支払い義務はなくなります。
留学期間中に年金保険料を支払わなくても将来的に年金を受け取る権利は失われません。ただし、その分払込み期間は短くなるので毎月の支給される年金額は割り引かれます。
留学中の国民年金保険料が免除されるかどうかで支出は大きく異なります。
収入がない時の保険料は1号になるので1カ月あたり16,980円です(令和6年度)。2年間の留学期間では16,980×24ヶ月=407,520円とおよそ40万円の負担軽減です。
家計が心許ない留学で40万円の負担軽減は大きいですね!
年金制度は海外に住所がある方に対しても引き続き適用されるのが原則ですが、外国の社会保険制度と二重に加入すると保険料が二重にかかってしまうため、現在は日本が米国や英国、ドイツなど23ヵ国と協定を結び、二重支払いの防止に努めています。
このように国民年金保険に関して留学中は(国外転出届を出せば)保険料を支払う必要がありません。しかし日本国籍の方であれば、転出届を出しても国民年金に任意加入することも可能です。任意加入手続きはお住まいの市区町村窓口にて一緒に行うので、転出届と一緒に手続きすることをおすすめします。
住民税の支払いが不要になる
住民税は、その市区町村に住んでいる方が納める税金です。
海外転出届を出すと、住民票は『除票』扱いとなり、住民税の支払い対象外になります。
ただし住民税は「その年の1月1日にその自治体に住んでいる方」が対象となるので、転出した年内は、住民税支払いが発生します。前年の所得に対する住民税は翌年度に課税されるため、転出届を出した後も前年分の住民税を支払う義務が生じる場合があります。
留学時に住民票を抜くデメリット
留学時に住民票を抜くデメリットは以下のとおりです。
- 住民票の発行ができない
- 銀行口座の新規開設ができない
- 失業手当の支給対象外になる
- 日本の健康保険に加入していない状態になる
留学の際には住民票を抜く影響を理解し、慎重な判断をしましょう。
住民票の発行ができない
日本国内での公的手続きが困難になる点が、住民票を抜く大きなデメリットです。
住民票が発行できなくなると、国内のさまざまな手続きに支障が出る場合があります。公的手続きや契約時に住民票や戸籍謄本などが必要とされることが多く、海外転出届を提出した後、転入届を提出するまではそれらの手続きが行えない可能性があります。
銀行口座の新規開設ができない
住民票を抜くと、銀行口座の新規開設ができません。銀行では新しい口座を作る際に、本人確認書類が不可欠だからです。
住民票を抜くと、本人確認の書類を提出できなくなります。金融機関が新規口座開設の際に住所確認を求めた場合、対応が難しくなるでしょう。既存の銀行口座は使用できますが、留学中に新たに日本の銀行口座を開設しようとすると問題が生じます。
緊急で帰国したとき、新しい住所の登録や必要書類の再発行に時間がかかる可能性があるということは覚えておきましょう!
失業手当の支給対象外になる
留学時に住民票を抜くと失業手当の受給資格を失う可能性があります。失業手当は、仕事を失った人が次の職を見つけるまでの経済的な支えになります。
留学する人にはそもそもあまり関係のない話かもしれませんね…。
日本の健康保険に加入していない状態になる
留学時に住民票を抜くと、日本の健康保険に加入していない状態になります。住民票がないと、市町村の住民とみなされないため、公的健康保険の資格を失うからです。住民票の除票とともに国民健康保険の資格も失います。
日本に一時帰国した際に急な病気やケガで医療を受ける必要があっても、公的健康保険の適用を受けられません。高額な医療費を全額負担する必要が生じます。そのため、帰国時はあらかじめ民間の医療保険などへの加入をしておいた方が良いでしょう。
日本の国民健康保険には、海外で受けた医療に対しても申請により、一定の補償を受けることが可能です(海外療養費支給制度)。しかし、あくまで日本で同等の医療を受けた時の医療費を基準として計算されるまで、アメリカやヨーロッパなど、日本よりも医療費が高い国でこの制度を利用しても十分な補償額を受けられない可能性があり注意が必要です。
すべての医療費をカバーするわけではありませんが、国民健康保険の補償が役立つことがある点も考慮しましょう。
また会社で健康保険に加入している場合、海外赴任している方も被保険者の資格があります。もし海外で病院を受診した場合は、一度医療費を全額負担したあと、健康保険組合などに請求手続きを行えば、健康保険組合などが負担する分の医療費が戻ってきます。
選挙権を失う(手続きをすれば国政選挙は投票可能)
住民票が除票となると選挙の投票権が届きません。特に自治体の選挙に参加することは、その地域の居住証明がなくなるので行うことができません。
国政選挙には一定の手続きをすれば参加可能です!
海外にお住まいの満18歳以上の日本国民で、在外選挙人名簿に登録されている方は、海外から日本の国政選挙に参加することができます。
在外選挙人名簿への登録方法は2通りあります。
1つ目は、海外へ行った後、在外公館を通じて、選挙管理委員会に在外選挙人名簿への登録申請を行う方法です。(原則として、日本で最後に住んでいた市区町村の選挙管理委員会に登録されます。ただし、平成6年4月30日以前に海外へ転出した方は、本籍地の市区町村で登録されます。)
2つ目は、最終住所地の市区町村の選挙人名簿に登録されている方(登録される予定の方を含む。)が、海外転出届出の際に、その市区町村の選挙管理委員会に対し、在外選挙人名簿への登録移転の申請を行う方法です。(海外転出後に在外公館に在留届を提出してもらい、申請先の市区町村で確認を行った後、登録されます。)
いずれにしても在外投票権が付与され、その権利を示す書類たが届きますのでそれを元に投票を行うことになります。
実際の投票方法は次のいずれかになります!
- 郵便による投票
- 在外公館での投票
- 日本国内での帰国投票
参考:総務省ホームページ
マイナンバーの手続き
以前は国外転出の場合マイナンバーカードを返却する必要がありましたが、令和6年5月27日から、日本国籍の方は、国外転出後もマイナンバーカードを継続して利用できることになりました(参考:マイナンバーカード総合サイト)。
また、余談ですが現在マイナンバーカードを持っていない海外在住の日本国籍の方(2015年10月5日以降に国外転出をしている方に限る。)もマイナンバーカードを申請することが可能になります。
留学時に住民票を抜くべきか否かの判断基準
留学時に住民票を抜くかどうかは、留学期間や将来の計画など、個人の状況によって決まります。以下の観点から個々の将来計画や現在の生活状況を総合的に考慮し、最適な選択をすることが重要です。
- 留学期間で判断する
- 個人の状況で判断する
留学期間で判断する
留学期間によって、住民票を抜くかどうかの判断は異なります。短期間の留学の場合、住民票を抜く必要性は低いとされています。一方で、1年以上海外に滞在する場合は、住民票を抜くのが一般的です。
主な理由は、国民健康保険料や住民税などの費用を節約する経済的メリットがあるためです。
半年程度で帰国予定がある場合は住民票はそのままの方が手間が少なく、不利益も限られているので推奨されます。留学期間と帰国後の手続きを総合的に検討し、状況に応じて判断することが重要です。
個人の状況で判断する
留学時の住民票の扱いは、個人の状況によって大きく異なります。保険料の支払い能力が限られている場合は、住民票を抜くことを検討しましょう。留学後の日本での生活計画に基づく判断も不可欠です。留学から戻ってすぐに日本での生活を始める場合には、住民票を維持するのが賢明です。
留学中の銀行口座利用や公的サービスへのアクセス、失業給付や社会保障の利用にも注意が必要です。公的サービスなどを利用する計画がある場合は、住民票を抜くことの影響を慎重に検討しましょう。
家族がいる人や、緊急での帰国の可能性がある人には、住民票の維持をおすすめします。留学先のビザや、滞在許可の条件に関する住民票の要件を確認することも重要です。さまざまの要素を総合的に考慮し、最適な選択をしてください。
住民票を抜くための海外転出届の提出方法
海外転出届の提出は、住民票を抜くための重要な手続きです。ここでは、海外転出届の提出方法について解説します。
海外転出届に必要な書類を準備して出国の14日前以降当日までに提出
海外転出届は、国外転出する日の2週間前から当日までの間に届け出ます。住んでいる市区町村の役所にて手続きを行いましょう。本人や世帯主、同一世帯の方が提出できます。本人が15歳未満の場合は親権者が提出してください。それ以外の方が届け出る場合は、委任状の提出が必要になります。
海外転出届を出す際の必要書類は、次の通りです。
- 届出人の本人確認書類(例)
- マイナンバーカード
- 運転免許証
- パスポート
- 在留カード
届出人が代理人の場合は下記の書類も必要です。
- 委任状
- 委任者の本人確認書類
また、以下の書類を持っている場合は、窓口へ返却します。
- 国民健康保険被保険者証
- 国民健康保険退職被保険者証
- 後期高齢者医療被保険者証
- 介護保険被保険者証
住民票の除票申請書は、市区町村役場で受け取るか、インターネットでダウンロードしてください。
» アメリカ留学に必要なビザの取得方法を解説!
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手続きが間に合わない場合は?
出発が迫っていて手続きが間に合わない場合は、一旦日本を出てから、留学先の日本大使館や領事館で手続きをすることも可能です。ただし、手続きが複雑になる場合がありますので、事前に問い合わせてみましょう。
一時帰国の際の注意点は?
一時帰国中に日本に滞在する期間が一定期間を超える場合は、住民票を戻す必要があります。また、再度海外に出る場合は、再転出届の手続きが必要になります。
留学時に住民票を抜いた場合の本帰国時の注意点
留学時に住民票の手続きをする際は、以下の点に注意しましょう。
- 海外留学保険に加入する
- 帰国後はすぐに住民票を戻す
一時帰国時は日本人の一時滞在用の保険に加入する
留学中の一時帰国時には日本人のための一時帰国用の保険に加入しておきましょう。住民票を抜くと、公的健康保険が適用されないからです。日本での医療費は海外に比べて比較的安価とはいえ、10割負担となれば金銭的なダメージは少なくありません。
住民票を抜くと日本国内に住所がなくなるため、国民年金の加入資格がなくなる点にも注意が必要です。国民年金から離れることにより、障害基礎年金などの給付も受けられなくなります。
本帰国後はすぐに住民票を戻す
一時帰国でない本帰国(もう留学先には当面戻らない)の際ははできるだけ早く住民票を戻しましょう。住民票がないと、日本国内での公的手続きやサービスが受けられなくなるためです。健康保険の再加入や運転免許の更新、就職活動に必要な各種証明書の取得が困難になります。
転入届は新居に移った後、または以前住んでいた場所に戻った日から14日以内に提出することが望ましいです。
1年以上日本に滞在する予定がある、または完全に帰国する場合には、必ず転入届を出し住民票を正式に更新してください。帰国後すぐに住民票を戻すことは、留学後のスムーズな社会生活への復帰に不可欠です。公的サービスを利用するためにも、速やかに転入届を提出し、住民票を更新しましょう。
住民票を抜いた場合、帰国後の手続きは?
住民票の再登録
日本に帰国したら、すみやかに住民票の再登録手続きを行ってください。必要な書類は、市区町村役場で確認できます。
国民年金や健康保険の手続き
帰国後、国民年金や健康保険に再加入する必要があります。海外で加入していた保険との関係や、保険料の免除制度など、詳しく確認しましょう。
転入届を出したその足で他の手続きを一緒に済ませてしまうことがおすすめです!
その他
帰国後は、税金の申告や免許証の更新など、様々な手続きが必要になります。事前に調べて、漏れなく手続きを進めましょう。
海外転出届に関するよくある疑問
海外転出届は普段出し慣れていない書類なので、疑問も多いことでしょう。よく寄せられる疑問について回答していきます。
- Q海外転出届を出し忘れたらどうすれば良いですか?
- A
海外転出届を出さずに海外に行ってしまった場合には、後からでも届け出る必要があります。提出方法は2種類。1つは海外から郵送すること、もう1つは国内にいる同世帯の方が届け出ることです。⁷海外から郵送する場合、以下の情報や書類をまとめてお住まいの市区町村役所宛に送付します。
- 国外に転出した日付
- 国外での住所・連絡先
- 元いた国内の住所
- 本籍、戸籍の筆頭者名(日本国籍の方のみ)
- 転出した本人の氏名、生年月日
- パスポートの写し(顔写真・出国日スタンプのあるページのコピーが必要)
国内にいる同世帯の方が届け出る場合は、以下の書類が必要です。
- 出国した本人のパスポートの写し(顔写真・出国日スタンプのあるページのコピー)
- 届出人の本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード・パスポートなど)
- Q1年未満の海外移住・海外赴任なら出さなくていい?
- A
1年未満の海外移住、海外赴任なら、海外転出届を出さなくてもかまいません。住民税がかかる点だけご注意ください。
- Q一時帰国する場合、海外転出届はどうすればいい?
- A
海外転出届を出された方が何らかの事情により一時帰国する場合、転入届は出す必要はありません。ただし1年以上日本に滞在する場合には、転入届の提出が必要になります。
- Q海外から帰国後、海外転出届はどうなる?
- A
海外から帰国し、日本に1年以上滞在することが分かっている場合は、転入届を出す必要があります。
転入届は日本に戻ってきて新しい住所に住み始めてから提出します。戻ってきた日から14日以内に手続きを行いましょう。
転入届とともに提出する書類は次の通りです!
- Q住民票を残した場合、税金や保険はどうなるの?
- A
住民票を残している場合、日本国内に一定期間住んでいると住民税の納税義務が生じます。留学先での収入がある場合、二重課税の恐れがあるため、税理士など専門家に相談することをおすすめします。
住民票を残している場合、引き続き国民年金や健康保険に加入している状態になります。海外で病気になった場合、海外旅行保険で対応できる範囲を超える医療費は、自分で負担することになる場合があります。
日本国内に不動産を所有している場合、住民票の有無に関わらず、固定資産税の納税義務が生じます。
- Q配偶者や子供が日本にいる場合はどうする?
- A
配偶者や子供が日本にいる場合、家族全員が同じ市区町村に住民登録している必要はありません。それぞれの状況に合わせて、住民登録の手続きを進めましょう。
- Q留学期間が延長になった場合はどうする?
- A
留学期間が延長になった場合は、改めて海外転出届を出す必要はありません。ただし、ビザの更新や、滞在先の変更など、他の手続きが必要になる場合があります。
まとめ
留学を計画する際、住民票の扱いは重要なポイントです。住民票を抜くことで得られる主なメリットは、以下の通りです。
- 国民健康保険料の免除
- 国民年金保険料の免除
- 住民税の支払い免除
ただし、住民票を抜く場合には、デメリットも考慮する必要があります。住民票の発行や新規での銀行口座開設ができなくなったり、失業手当の支給対象外になったりする可能性が高いです。留学期間や個人の状況に応じて、住民票を抜くかどうかを慎重に決めてください。
住民票を抜くためには海外転出届を提出する必要があります。手続きは、出国予定日の14日前から当日までの間に行うことができます。留学における住民票の重要性を理解し、スムーズな留学生活を送れるように準備しましょう。
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