海凪が研究留学を志して実現するまでの体験談

留学検討中の方へ

研究留学をどうやって実現させたかの体験談」は留学のテーマ記事の中でも最も興味を持たれるテーマの一つだと思いますので記事にしました。具体的なイメージがつかない方は参考にしていただければ幸いです。

海凪
海凪

個人ばれしない程度にします!!

なお、「個別の話よりもっと一般的な研究留学の実現方法を知りたい!」という方は以下のページで網羅的に解説していますのでご参照ください↓

1. 研究留学を目指したきっかけ

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そもそも自分は学生時代、いや初期研修医修了時までは留学というものには全く興味がありませんでした。
優秀でやる気のある(語弊あり)医局で出世したい人たちがいくんだろうな〜くらいの。

しかしその後、ひょんなことから都会の専門病院で研修することになり、そこで多数の臨床留学、研究留学の経験者出会い、その人たちに憧れの気持ちを持つようになりました。しかしこの時点でもあまり「自分はする!」という意識はありませんでした。

特に臨床留学実現のハードルも必要なエネルギーもかなり高く、後期研修が終わった後ちょこちょこ勉強しようと試みたものの、日常の慌ただしさの中に流されていきました。

一方で研究留学臨床留学ほどのハードルの高さではないものの、これはこれで基礎研究をしたことない自分にとって「考えるのは今じゃない」という状態で、そもそもサブスペシャリティ(専門科の中のさらに細かい専門)も決まっていない自分には同じくらい遠い存在でした。

しかしなんだかんだで結局大学院に入学することになり、そうなるとPhD取得基礎研究での論文作成も見えてくるわけで…

2. どんな手段をとるにしてもPhDと論文は重要

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どの手段をとるにしても、博士号や論文は非常に重要になります。
それはこれらが「名刺」代わりになるからです。

これらがないと留学の実現性も途端に低くなり、待遇も良いものを得られにくくなります。
もちろん「強いコネ」やその他の「強い実績」がある方はその限りではありません。
存分にそれを活用してください。
例えば「推薦状」はアカデミアの中で強い影響力を持ちます。
もし知り合いや昔お世話になった方に当該分野で世界的に有名な方がいれば、それだけで留学の実現の可能性はかなり高まります。結局はアメリカも(他の国も)コネがものを言う場面は多いのです。

しかしほとんどの方はそれを持っていないのでこのページをご覧になっているのではないでしょうか。

PhD(博士号)は非常に重要です。論文はインパクトファクターH-indexのような指標はあるものの、人や分野によって評価は異なりますし、その指標が○以上なら助教授、のようにクリアカットに評価されることはありません。
しかしPhDはそれだけで一定の研究遂行能力と最低限の知識を持っていると判断されます。
実際アメリカでPhDを取得するのは日本の医師が日本でPhDを取得するより遥かにハードルが高く、MD-PhDはそれだけでかなり価値を持ちます。

日本の医師免許や医学部卒業は必ずしも海外で同等に評価されるわけではありませんが、PhDはまだ大丈夫です。日本でとったPhDだから、と下に見られることはまだありません。
まだ、と言うのは実際には日本で取る医師のPhDや大学院によってはものすごく容易なので、実態がバレたらもしかしたら…という気持ちが拭えないからです。

それだけでなく、PhDを持っていないとポスドク(Post-doctoral researcher)にはなれません。
これは研究室のPIではなく大学が判断するためコネはここには効いてくれません。
もし運よく採用されたとしてもおそらく職名Professional StudentあるいはResearch Assistantなどとなるため給与や福利厚生にかなり差が出るはずです。

なので医学研究留学を目指す先生方は必ず大学院に入りましょうそれが一番の近道です。
(残念ながら大学院生は無料・もしくは格安で臨床にこき使える労働力と見ている大学/医局もまだまだあるようですが…)

この頃から英語の勉強を多めにするように…

幸い海凪の大学院の所属研究室は比較的時間の融通が効きましたので研究と並行して英語の勉強を始めることにしました。まずはPodCastやTOEICなど比較的取り組みやすいところから始めて最終的にTOEFL-iBTでスコア100点を取ることを目標に取り組みました。

なぜ海凪が研究留学前に英語が必要と考えたか、またどのように英語を勉強してきたか、オススメの勉強法などについては下記記事群をご覧ください。

3. 論文が出たことで思いがけず海外発表→海外の研究生活が少し身近に

auditorium-academic-meeting

もう一つ後押しする出来事が。
これは偶然なのですが…自分のアクセプトされたばかりの論文が編集者もしくはレビューワー(?)の目にとまり、本来はCorresponding Authorが招待されたのですが時間の関係で私に話が回ってきて小さな国際学会に講演者として呼ばれることに…。

PhDを持っていることは研究に関する最低限の知識と経験、論文作成能力を持っていることを意味しますが、やはりそれだけで「じゃあ君を採用しよう」とはなりません
少なくとも最低一つ、できれば複数、「ある分野に特化して」論文が書いてあると、当該分野にはある程度詳しい・関連する研究ができるもしくはできる素地がある、と判断されます。
そうなるとその分野の研究者から受け入れてもらえる可能性は格段に高まります。

私の主要論文はたった一本でしたし、それほど大きなIF(インパクトファクター)の雑誌ではなかったのですが、オープンジャーナルであること、また響く人には響く分野だったので上記のような機会を得ることができたようです。

結果的にその会で直接就職に結びついたわけではなかったのですが、学会でただ質問しただけではない内容を話し合う機会を頂けたことで世界との距離感がぐんと近づいた(錯覚ですが)気がしたのです。

4. 各所に希望を伝えるもなかなか話は進まず

perfection-is-stagnation

ただ現実はそんなに甘くありませんでした…。

前回の学会でも複数の人に留学したいんだ、ということは話しましたが、そもそも一見さんに紹介するような有給の席はなかなかありません。奨学金があるなら…という話すらもらえませんでした。
私の英語や知識が未熟だったのか、たまたま本当に全く心当たりがなかったかわかりませんが、そんなことすら教えてもらえません。
アピール/英語力不足でうまく伝わらなかっただけかもしれませんが…。

その後他にも国際学会に直近で2回ほど行き、知り合った人などに同様の話をしましたが色良い返事や打診の連絡はなし。
また同じ医局のツテは乏しく、2つほど打診してもらいましたがやはり空きはないとのこと。
学会・勉強会で他大学の人にも2−3人ですがお声がけもしましたが…。

もしかすると普段の人脈がもっと太ければ違ったのかもしれませんが、やはり一見さんかそれに近い他人の、しかも他大学の人に便宜を図るような人はいませんでした。繰り返しになりますがたまたまその様な話がなかっただけの可能性もあります。その場合も継続的な人間関係であれば話が来たときに思い出してくれるのかもしれませんが。

その後ですがメーリングリスト経由で公募があったこともあります。
その時はすでに留学していたので関係ありませんでしたが、もしまだ留学が実現していなかったら手を上げていたと思います。

こうなると後はめぼしい研究室を自分で見繕ってメール攻撃するしかないか…そう考えるもまだその勇気と行動力が出せない時、一つの話が舞い降りてきました…

5. 研究留学支援プログラムに応募→採用!

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個人バレ防止のため詳細は省きますが、公募で研究室との仲介の機会をもらえる、まさに渡りに船の機会をいただくことができました。この仲介はポスドクとしての給与を出すことを前提としていました。

つまり、資金源と研究室が同時に確保できる可能性が高い、ということです。

偶然と運にも助けられましたが、機会をとらえて挑戦したこと、また今までにお世話になって方達のお力添えも加わり採用してもらうことができました。

6. 複数の研究室とのビデオ面談が実現

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しかしここまで来ても順調とはいきませんでした。
オンライン面接を4施設と行うことができましたが最終面談(対面での)まで行ったのは1つだけでした。

あの頃を思い返すとその時使ったツールがZoomではなくSkypeがほとんどでした。
時代を感じますね笑

a. あるアメリカ中部の大学

こちらのビデオ面談は割とフレンドリーに進みました。
PIだけでなく同時に複数の方に紹介いただき、自分の大学院生時代の研究及び臨床分野と地続きの研究をしていること、その部分を担ってほしいことを話されました。
確かに私の臨床・研究分野と同じ分野の教室で基礎と臨床双方行っている研究室で背景を含め完全にマッチしている印象でした。

しっかり私の論文にも目を通してくれているようでした。こちらには大学院生時代の研究・論文について簡潔にプレゼン(スライドなし)し、今後について考えていこう、とビデオ面談を終了しました。

しかししばらくして届いた連絡は「海外の研究者に使用できる充分なFundが見つからなかった」というものでした。これには驚きました。「お金があったから声をかけてきたのではないのか?」と思いましたが、お金がないのでは仕方がありません。

その時のメールを見返しても「獲得できなくて残念である」ということは十分伝わってきました。もしかすると「ポスドク前提」でなくこちらが奨学金を獲得して申し込めば受け入れてはくれたのではないでしょうか。

「もしお金が獲得できたら検討し連絡してほしい」と返信しやりとりを終了しました。
しかしその後先方から声がかかることはありませんでした。

b. あるアメリカ北部の大学

こちらは面談者から「一応声をかけてみた」というのが結構伝わってきました。
基礎100%の研究室でかつ分野としてもほんの少し重なっている部分もありましたが全体としては明らかに離れている印象でした。私の論文も読んでいないようでした。

お互いマッチさせようとする熱量を感じられず、面談後の連絡も礼儀として私の方からメールしましたが返信すらなくそのまま終了しました。

むしろ「なんで声をかけようと思ったの?」というレベルでした。
お互い需要がありませんでしたね。

c. あるアメリカ西部の大学

こちらもバリバリの基礎系研究室でした。
しかし私の興味を引いたのは再生医療・幹細胞治療を扱っていたことでした。
若干私の研究範囲からはずれてはいましたが、もしかするとMD-PhDを必要としていたのかもしれません。研究室を率いる方は若くエネルギーがありそうでした。そして研究室自体もすでに4人のポスドクを抱える大きな研究室でした。

面談も本気度が感じられましたし、これから有望な研究分野かつ私がやりたいと思っていた分野でもありとてもテンションが上がりました。

一方で私自身「ここで彼らに給与分の貢献ができるだろうか?」と不安に思ったのも事実です。
少なくとも「ゆとりのある研究生活」は難しかったでしょう笑

こちらも感触は悪くありませんでしたが、1個目の面談と比べると少し怪しい雰囲気がありました。
そして後日の連絡は「Fundの選考に漏れて研究費が獲得できなかったため今すぐに雇うことはできない」というものでした。

もし今後資金を獲得できたら、という意味のない口約束のやりとりをして、ここともやりとり終了となりました。

数ヶ月後念のため後日確認したところ(NIHのグラントは誰がどのくらい持っているかが科研費と同様に調べられます)、確かに資金は獲得できなかったようです。

d. 今回採用してくれたアメリカ中部の大学

面接の感触は1.と同様良好でした。論文も読んでくれていましたし、それだけでなく複数の選択肢(所属科の研究室2つと関連科の研究室1つ)を与えてくれました。話を振られた部下(と言ってもPIですが)はもしかしたら困惑していたかもしれませんね😅

そしてビデオ面談後も連絡を頻回にいただき、現地に招待して面談を整えたくれただけでなくその経費も全てその部門の経費(研究費?)で賄ってくれたのです。

その現地での面談も中には今ひとつだったものもありましたが結果として同じ部門に在籍するMD-PhDのPIにポスドクとして雇ってもらえました。現ボスは同大学に直近で異動してきており、今まさにこれから研究室を立ち上げるところでした。
それが一つの要因かもしれません。つまり質にこだわるよりは早く人員を確保したい、的な笑。

そして私を雇う研究費は少なくともポスドク開始時点ではどうもその部門全体の共有ファンド(??)から出ていたようでした。この辺のカラクリは怖くてまだ聞けていません笑。

7. ポジション(受け入れ先研究室と給与)をゲット

The-University-of-Iowa-INI-MERF

このようにして海凪はポスドクのポジション(受け入れ先研究室とポスドクとしての給与)を与えてもらうことができました。

ポスドクになれたのは良かったが同時にハードルの高さを感じた

私の場合支援プログラムという大幅な下駄を履かせてもらってかつ4つ目の面談でようやく実現しました。おそらくその下駄がなければ一生ポストは見つからなかったかもしれません。やはり給料+福利厚生の金額は一研究者にとってとても大きく簡単に用意できるものではないからです。

逆に言えば下駄を履かせてもらえる機会があれば絶対に逃すべきではないし、その機会がないのであればポスドクに固執するべきではないと思います。

もちろん素晴らしい実績があれば別です。実績が増えれば増えるほど可能性は高くなるでしょう。しかしそれでも選択肢を限定すべきではないと思いました。

振り返っても幸運の連続の結果だったかもしれません。一方で今までした行動の多くがつながっており、英語の勉強など留学を意識した行動を何もしていなければこの結果は得られなかったことは確信しています。

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