海外の研究留学を志す人にとって「失敗したくない」というのは共通の悩みですよね?
特に医師の方にとっては、臨床のキャリアを中断し、収入は無給もしくは普段の給与より安い奨学金/ポスドクの給料でやりくりし、場合によってはパートナーのキャリアやこどもの幼稚園や小学校の大幅な変更を迫られ…。しかも準備もそれなりに時間がかかります。
日本人は特にそういう文化がありますが、「他の同僚(医局員・同じ病院の医師)に迷惑をかけて行かせてもらっている」と考えてしまうこともあります。
そんな多くのものを犠牲にして留学をするのだから、成功を求めるのは当然のことでしょう。そして極論を言えば、何が成功かは「人による」としか言えません。Natureクラスに論文を載せたい人と、単に海外で生活したかった人では雲泥の差があるわけです。
しかし成功の定義がなんであれ、海凪は「失敗が怖くて動き出さないのはもったいない」と考えます。
この記事で海外医学研究留学の成功と失敗について考えてみましょう!
>> 研究留学先を選ぶ時は何を重視すべきか?目的と価値観を炙り出す9つの質問(参考記事)
研究留学の「失敗」って一体どんなこと?
そもそも「研究留学の失敗」とはどんな状態を指すのでしょうか?
海凪は「失敗」はほぼない、というか「行った時点で成功している」と考えます。さらに、仮に留学が実現しなくても、それを目指して色々行動した時点で「失敗ではない」とすら考えます。
1. 研究留学に行った時点で成功している
研究留学にはメリットがたくさんあります。そしてその多くは論文が出なくてもそこで研究活動をしただけで獲得できるものです。
まず、研究留学を志して行動することで「人脈が広がる」「視点が広がる」「知識が広がる」「英語の勉強になる」というメリットが得られます。
そして研究留学を達成した瞬間「アイデンティティ」「留学という人生経験」「家族との時間」「外国生活を通して見えてくる日本の良いところ悪いところ」などなど、人生のスパイスをたくさん得ることができます。
どうしてこれで「失敗した」などと言えるでしょうか?
「普通の医師」にこそ「行った時点で成功」と言える研究留学をお勧めします。海凪が考えるその理由については以下の記事をお読みください↓
2. 心身を壊してしまったら「失敗」かもしれない
しかし唯一「失敗」というものがあるとすれば、それは健康を強く害してしまったとき、特に精神的に病んでしまったときでしょうか。
慣れない海外生活と慣れない業務をすることになりますので、全く健康を損なわないのはむしろ難しいかもしれません。年齢も研修医の頃とは違い3〜40歳になるとほんの少しずつですが体の衰えを感じることもあります。私の知り合いでも研究留学中に健康上の理由で病院を受診する人は珍しくなく、海凪自身も少し問題が生じました。
しかし単純な健康の問題でそれが短期間に回復するものであればそれだけで「失敗」とはなりません。
働きすぎで体を壊したり、人間関係や成果が出ないことで悩んで精神を病んでしまったりしたら何のために留学したかわかりません。リラックスして留学生活を楽しめばいいんです。
論文は二の次です!(負け惜しみ?)
3. もし「研究留学に失敗した」と感じたら?
もしそれでも「失敗した」と感じてしまったら?という疑問にお答えして「医師が研究留学に失敗したと感じたら?3つの理由とその対策20選について解説」という記事を作成しました。こちらも併せて参考にしていただければ幸いです。
研究留学の成功には様々な視点とレベルがある
海凪は留学の失敗は一つ、成功にはたくさんの階層と方向性があると思っています。成功については加点方式の目線で見ていきましょう。
1. 研究留学をして無事に帰ってくることができたら成功
失敗しなかったら成功!ということですね。
異国の地で母国語でない言語・文化のもと研究生活を送ることそのものに価値があるという視点です。「研究留学を体験した」という時点で有形無形の財産を手にしたも同然と言えます。
2. 留学生活で家族との時間を増やせたら成功
これは医師の方にはとても大きなメリットのはずです!
もちろんや病院、地域などに大きく左右されますが、それでも留学を考えるような立場と年齢の方で週休2日・9時5時で働いている方はほぼ皆無だと思います。
このゆったりした生活が研究留学生活では可能です!
研究で多少夜間休日に頑張ることがあったとしても、その殆どは個人もしくはボスとの相談でコントロールが可能で、普段の勤務とは桁違いに家族との時間が持てることは間違いありません(敢えて忙しく研究したい方は除く)。
家族と共に暮らす海外生活は最高ですよ!!!
3. メンター・同僚と関係を築けたら成功
これも大事な視点です。
もちろん実績をあげて国際学会などで人脈を広げればたくさんの海外研究者と仲良くなることは可能でしょう(実際たくさんいらっしゃるように見受けられます)。
しかし共に働いた・研究した、というのは上記とはまた違った人間関係を築くことができます。
海凪は今のところ「ぼちぼち」といったところです笑
4. 一本でも論文が出たら成功
何本出た!とかIF何点!とかネイチャー!とかはオマケです。
研究室、またはその時の事情によってIFが小さくてもこまめに論文として出す場合と、IFが大きい雑誌だけを狙う場合がありますので、本数やIFは自分がコントロールできることではありません。
まずは小さくても1本出たら成功と考えてください☺️
海凪は留学2年半でなんとかPublishまでこぎ着けました!
5. お金をもらって研究留学できたら成功
留学の資金源は様々な形があります。
- ポスドクとして相手の研究室が雇用
- 奨学金
- 所属している医局に籍を残す形で留学(大学から給与)
奨学金でもポスドクでも普段もらっている給与を考えれば大きな差はありませんが、有給で行けたらプラスアルファの成功です。ポスドクならお金に少し余裕が持てますし、奨学金ならこれを獲得したこと自体が実績になるのでむしろポスドクに比べてアドバンテージになる場合すらあります。
ちなみに海凪はアメリカでポスドクの給与をいただいています。
この場合の目に見える金線的なアドパンテージは以下の3点で、これはなかなかに大きいです。
- 福利厚生として健康保険の6割程度が給与外でカバーされる
- 年金の2/3が給与外でカバーされる
- 日本の為替やの影響を受けない
特に三番目は2022年大きな問題になりました。日本の奨学金で留学している方はドル高で著しく目減りしてしまい、生活が苦しくなっています。
余談ですが、医局から給与を出してもらう形もそれなりに見かけます。金額は奨学金よりは高いことが多く、年金や日本の医療保険のカバーなど有利な面もあります。またその場合先に資金源が決まっているので留学先との交渉が非常にしやすいということも大きなメリットです。
ただ、殆どの場合1年分だけということが多く、最初の1年間のうちに2年目以降の収入をを研究先との交渉や新たな奨学金の獲得などで確保しなければならない点、また医局に収入面もお世話になるため医局との信頼が必要&お世話になった手前心理的に留学後に医局を辞めにくくなる点がデメリットです。
いずれにしてもその給料で貯金〜トントンでやっていくのは難しいので、もらえたらラッキー、の精神で準備していきましょう!
別記事で応募できる奨学金の一覧・また奨学金獲得に必須な書類であるCVとPersonal statementの書き方について解説していますので興味のある方はご参照ください!
6. 留学中に表彰、奨学金や研究費を獲得できたら成功
これはハードルが高いと感じるかもしれません。
しかし実は海外からきて研究しているというところにアドバンテージがあったりします。
例えば「国際的な架け橋になります」とPersonal Statementに書くことでアピールになる可能性もあります。またアメリカではPhysician-Scientistを求めているという風土(需要の割に供給が少ない)があり、MD-PhDであることのアドバンテージが活きてくる場合も少なくありません。
実際海凪はそれらを駆使(?)した結果、単年ですが年間約5万ドルのポスドク奨学金を獲得することができました!!
時間の制約がある・今までの実績に左右される・殆どの場合ボスの許可が必要・市民権/グリーンカードを持っていない場合応募枠は限られるなどさまざまなハードルがありますが、ダメもとで挑戦してみる価値はあると思います。挑戦したことそのものも大事な経験として蓄積されるでしょう。
まとめ:とにかく研究留学にトライしましょう!!
上記のようにさまざまな視点の研究留学の成功がありますし、失敗はオーバーワークの防止と心身のリフレッシュを心がければ防げます。ぜひ気楽にトライすることをおすすめします。Natureに論文を載せることだけが成功ではありませんよ!!
トライしたらその分何かをもらえるのが「研究留学」だと思います。
海凪は研究留学に挑戦する全ての方を応援しています!!
下記記事も参考にしてみてください↓
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