普通の医師こそ海外医学研究留学すべき5つの理由

留学検討中の方へ
海凪
海凪

研究留学と聞くと「優秀な医師/研究者がすごい研究をするために行くもの」というイメージはありませんか?

そんな絵に描いた留学をする方々は国内の実績と期待を背負いながら出国し、数多の研究室から歓迎され、NatureやScience、NEJMなどに論文を掲載し、そして国内の素晴らしいポストを得て堂々と帰国します。帰国後も多方面で活躍し、学会などの講演で「留学の素晴らしさ」を折に触れて喧伝するでしょう。

それ自体はとても素晴らしいことだと思いますし、ぜひそういった優秀な方々には国内だけにとどまることなく海外でその力を存分に発揮してほしいと願っています。

しかし、もし皆様が留学はそういった方達だけのためにあるとお考えであればそれは大きな勘違いです。上記の様な優秀な方は仮に留学をしなかったとしても活躍するはずです。あなたの周囲にも「留学はしていないが優秀で活躍している」方達はいらっしゃるのではないでしょうか。海凪はむしろ「普通の医師こそ積極的に留学すべき」と考えています。

ちなみに海凪は「普通の医師」です。どれくらい普通かというと

  • 学生時代の受賞はゼロ
  • 留学準備開始前の受賞もゼロ
  • 医師人生を通してUSMLEの受験歴なし
  • 研修病院はごく普通の地域の中核病院
  • 初英語論文はPubMedに載らない雑誌の一例報告
  • 留学時点のファーストオーサーの論文は3本で1本は学位論文、他2本は症例報告
  • 8回Submitしても載らないお蔵入り論文がある

という普通さです。ちょっと泣けてきました…。

ここでは「普通の医師」であると自負する海凪がなぜ「普通の医師こそ研究留学すべき」と考えているか、5つの理由を挙げて説明します!

海凪
海凪

かなり小物感のある理由が並びますので共感性羞恥を強く感じる方はそっ閉じしてください…

1. 簡単にアイデンティティを手に入れられる

普通の医師はあまりアピールするものがありません。
「〇〇科です」ということはできても「◯◯が専門です」「◯◯の研究をしています」と堂々といえる医師がどのくらいいるでしょうか?もし言えないという方はご安心ください。「◯◯に留学して◯◯◯の研究をしていました」というだけで同じように凄く聞こえませんか?実際には半年〜数年やっていただけに過ぎないのに、です。

もちろん優秀な人は留学経験を振りかざしたりはしません。その必要がないからです。
しかし普通の医師は振りかざすものすらありません。

「研究留学の経験がある」と一言自分で、もしくは人から言及があるだけで大抵の人は「どこに行ったんですか?」など(社交辞令であっても)聞いてくれるでしょう。そして「あの人は留学に行ったことがある」をアイデンティティの1つとして認識してくれるはずです。
ただ「じゃあ英語話せるんですね」までセットになりがちなのが痛し痒しですが。

ぜひ研究留学をすることでご自身の医師履歴に「〇〇に研究留学」の一文を加えてみてください。きっとご自身の自己肯定感と周囲の認識の向上に一役かってくれるはずです。

2. 一生の思い出・話のネタができる

臨床に追われている「普通の医師」には臨床以外の話のネタがあまりできません(言い過ぎ?)。

留学の話になると、留学経験のある人はほぼ確実に自身の留学経験の話をします。もちろん自慢というよりはその人に良かれと思って話していることがほとんどですが、とにかく話のネタになります。

海外で生活するというのは誰にでもできることではありません。
留学生活を送る中では様々な文化の違いや言語の違いを目の当たりにし、色々とトラブルや苦労もあることでしょう。その1つ1つが大事な思い出になり、話のネタになります。

もし留学の結果としてアカデミアの世界に残らなかったとしても、いく先々で留学の話は一定程度の盛り上がりを見せるはずです。

ただ注意しなければならないのは求められた時だけ話す、という点です。
あまりにしつこかったり強引に話題を自分の留学に持っていくと嫌われるきっかけにもなりますので話し方には注意しなければなりません。

3. 家族にちょっといいところを見せられる

普通の医師でも家族の尊敬は得られます。しかし常に一緒にいる家族は職場の姿を見ずに家での疲れた姿を見せられていると「この人本当にすごいの?」という思考になりがちです。心当たりはありませんか?

その一方で「留学」というだけで医師をするだけよりも「なんとなくすごい」というイメージを持つ方は多いと思います。留学を実現することで「実はこの人すごかった?」と思わせることができます。

同時に英語圏の留学では英語を使えるということもアピールできます(配偶者やこどもが英語が苦手な場合に限りますが)。

ご家族も頼るところが少ない状況で生活することになりますから、今までであればイニシアチブを取れなかった場面でも海外生活中ということで活躍できることになります。

生活中はとても頼りにされるはずです!!実際海凪は毎回こどもを病院に連れて行くときは付き添っています。これは留学生活だからできることですし、必要とされることです。

ぜひ留学生活では家族との交流も楽しんでください!

4. 平凡な毎日から一定期間解放される

普通の医師の毎日は平凡です。日々のスケジュールは外来・入院・手術/処置・当直・外病院勤務など異なれど、毎日「診療業務」をしていることには変わりはありません。

海凪
海凪

もちろん診療業務はやりがいのある仕事で海凪自身も帰国後は臨床医として働く予定ですよ!

病院を異動しても仕事内容はそこまで大きく変わりません。「自分はこのまま歳をとっていくのだろうか…」と悶々とする方も少なくないと思っています。特にここ数年は慣れない「コロナ対応」で疲れてしまった方もいらっしゃるはずです。

留学をすることでこの生活は一変します。

もちろん研究は人によっては慣れた題材でやるかもしれませんし、海外で日本とそこまで研究のやり方や道具に大きな差はありません。

しかし慣れない英語でのディスカッション、発表、違った文化でのスケジュールや他研究者とのやりとり、専属研究者としてのスケジュールの自由度…何もかも違った生活に大いに刺激を受けるはずです。

さらに!留学生活中はもう夜間勤務も急な呼び出しも無駄な待ち時間もありません。
「健康でかつ刺激的な生活」を楽しみましょう!!

5. 「何かを目指す」充実感を手に入れられる

普通の医師は目指すものがあまりありません。もちろん臨床の場面で達成感を味わうことはたくさんあるでしょう。しかし人は慣れるものです。そして臨床以外で中長期で達成を目指すものといえばせいぜい専門医の取得や更新・病院のポストくらいです(もちろんそれも大事です!!)。

研究留学は実現までは実現を目指しますし、留学中は研究費申請・研究発表・論文出版を目指します。研究留学には明確な目標があり、目指すための必要なチェックポイントがあります。

人は「何かを目指し1つ1つ達成する」ことに充実感や達成感、幸せを感じます。
留学を志して実現する過程でそれらをたくさん味わうことができます。

なぜ「臨床留学」ではなく「研究留学」なのか?

ここまで読まれた方「それって臨床留学でも良いのでは?」と思われた方もいるかもしれません。確かにそうです。しかし臨床留学は研究留学に比べて明らかにハードルが高いです。

臨床留学のハードルの高さ
  • 年齢制限がより厳しい(学生時代〜研修医までの準備・行動が大きな差になる)
  • 海外の医師免許獲得〜採用までのハードルが高い
  • 意味のある臨床経験をするには年数が必要(レジデントからスタートの場合)
  • 競争を何回も勝ち抜かなくてはならない

「普通の医師」を自認する方が果たしてこの厳しい臨床留学を実現可能でしょうか?

臨床留学は資格・英語力・それらを得る若い時からの積み重ね・情熱・時間を捻出する体力と創意工夫などが必要です。「普通の医師」にはあまりに高すぎるハードルです。

海凪も臨床留学を夢見ることがありましたが、結局は上記のハードルの高さから断念しました。

抜け道としては技術職(手術や内視鏡など)のレベルや実績が一定程度ある場合、必ずしもレジデントからスタートする必要はなくその州でのみ働ける免許を得られる可能性があります。その場合ハードルは若干ですが下がります。ただし職場はあまり選べませんし、医師としての採用なので上記のメリットのいくらかは手放すことになります。

とはいえアメリカの医師のQOLや給与は一般的な日本のそれと比較すると段違いに良いです。特に日本での待遇に不満がある方は一考の余地があるかもしれません。

一方の研究留学ももちろん博士号、実績やコネ、運、英語力など必要なものはあります。しかし研究留学では「必須条件」はほとんどありません。

博士号の取得は日本の場合金銭的な面を除けばハードルはアメリカよりも非常に低いです。社会人大学院も可能ですし、学位論文の要件もまだまだ緩く「英文をSubmit(アクセプトは必要ない)して学内の審査にさえ通ればOK」というところも珍しくありません。

英語力は最低限論文をツールを使いながら指導のものと作成できる文ができればよくて、ほとんどの場合は英語の資格試験の点数もいりません。実績はコネがあれば不要ですし、コネは実績があればそれほど必要ありません。

また留学の期間も2-3年も在籍すれば上記のメリットは全て享受できますし、プラスそれなりの論文1本は書けるでしょう。金銭面も医師であれば仮に良い資金源が確保できずとも帰国後になんとかなります。圧倒的にハードルが低いのが「研究留学」なのです。

表にまとめるとざっくり以下のような違いがあります。

研究留学臨床留学
業務内容研究臨床(フェロー以上の場合研究日もあり)
勤務時間週5日・フレキシブル原則週5日・オンコールは休日含め1週間連続
給料(日本の医師との比較)無給〜安い一般的に高い(レジデントは安い)
年齢の壁概ね40歳まで概ね30-35歳まで
資格試験不要(稀にTOEFL/IELTS)USMLE(実績があれば例外あり)
英語力最小限でも大丈夫求められるレベルが高い(TOEFLiBT 100点?)
博士号ないと厳しい不要(コースによってはアドバンテージあり)
コネクションないと実現に努力必要ないと希望する場所には行けない可能性大
キャリアの将来性教授以外にはあまり影響しない競争を勝ち抜けば待遇はどんどん良くなる
研究留学と臨床留学の違い

もしあなたがお金を稼ぎたいのであれば研究留学はおすすめしません

とはいえ全員の「普通の医師」に研究留学を勧めるわけではありません。
もしあなたが「お金を稼ぐ」「そのお金を使って有意義な人生を送る」ことが人生の目標の場合、研究留学はお金を稼ぐことに役立つどころか足を引っ張ることでしょう。それは奨学金であってもポスドクであっても同じことです。留学中の収入は激減する一方で、それが将来の投資となって跳ねかえってくることもほぼ期待できません。

人生の時間は有限です。ご自身の価値観と照らし合わせて有意義な選択をしてください。

まとめ:大層な理由はいりません。自分のために研究留学を!

こういう話は自分で書いていても恥ずかしいです。
しかし恥を忍んでも「普通の医師」に届けたいと思いました。

あなたの人生はあなたのものです。
自分と近くの人の幸せのためにぜひ「研究留学」も選択肢に入れていただけますと幸いです。

コメント

  1. げげげ より:

    普段こうしたサイトでコメントすることはないのですが、あまりにも私自身のニーズにマッチしたため思わずコメントさせていただきました。私こそ「普通の医師」です(笑)
    現在大学院で基礎研究をしているのですが、医局で教授からPhD取得後の研究留学に興味があればとの話を頂き半年以上悩んでいました。入局時に興味があると発言していたのを覚えていただいていたからなのですが、所帯を持って年月が経つと金銭的・子どもの教育をはじめ様々な事情で腰が重くなり、それらを打破するだけの留学する立派な大義名分を求め続けていました。わりと新しい医局のため、医局として先輩方が留学した実績などもなく経験談を聞くのが難しい環境でした。最近になってようやく、行かなかったら後悔するだろうな、行こうと思えば行ける機会がそこにあるというのは滅多にないこと、そういう動機でもいいのかな、と思うようになりました。
    ネットでアメリカ留学のことを調べようと開いたのが、海凪様のサイトでした。実際に留学をされている海凪様が、実に率直な5つの理由を挙げておられるのを拝見して、強く背中を押されました!笑  こういう経験者の本音を探していたんだと思います。
    詳しく多岐にわたるご経験談をざっくばらんに公開していただきありがとうございます。今後も大いに参考にさせていただきたいと思います。

    • げげげ様、嬉しいコメントありがとうございます!
      このブログを立ち上げてちょうど半年になりますが、げげげ様のコメントが記念すべきコメント第1号です!
      記事にも書いたようにこの内容を公に晒すのはなかなか勇気がいりましたが笑、お役に立てて何よりです。
      我々医師の強みは多少の金銭的失敗は容易に挽回可能なところです。そしてご存知のように基礎研究はテーマや結果の当たり外れが大きく、優秀=良い成果ではないので逆にいうと「普通の医師」もチャンスがあると思っています。
      全員に機会が与えられるわけでもありませんので、チャンスのある多くの「普通の医師」に研究留学に挑戦してほしいと思っています。またこどもの教育にも長い目で見ればいい点が沢山あると思っています。

      これからもまだまだたくさんの役立つ情報や体験談をアップしていく予定です。
      げげげ様ももし「こういった情報や記事が欲しい」という要望がありましたら遠慮なくコメントやTwitterのDMなどでリクエストください!最大限ご要望にお応えしますので🙇

タイトルとURLをコピーしました