医師の研究留学に潜む5つのリスク 〜体験談を交えて〜

留学検討中の方へ

「原則として留学に失敗はない」と考える海凪ですが、そう入っても海外に居を移して全く異なる仕事と生活をする以上、そこにはリスクが存在します。

この記事では自身の体験談と知り合い・伝聞の実例を交えて(とは言ってもプライバシーに配慮して)留学に潜むリスクとそれに対する対応・解決策を解説します。

あらかじめ備えることで、留学に伴うリスクをコントロールしておきましょう!!!

1. 金銭リスク

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まずはこれが思い浮かぶのではないでしょうか?
考えつくだけでもざっと以下の金銭的リスクが思い浮かびます。
1つずつ解説していきます。

  • 収入が下がる
  • 生活費がかかる
  • 為替リスク(手数料含む)

A 収入が下がる

程度に差はあれど、臨床医が研究留学をするとほぼ確実に収入は下がります。
海凪の場合、金銭的に最高の条件(ポスドク待遇・一人暮らし・田舎)の間はその収入でも貯金をつくれましたが家族と合流後は切り崩し一直線です笑。
通常は良くてプラマイゼロ、下手すると500~1000万円/年の資産切り崩しを強いられるはずです。

リスクのコントロール方法

収入が下がることに対する対処は以下が考えられます。

  • 貯金
  • より良い奨学金/助成金の獲得
  • 投資
  • 副収入の確保

まずは相応の動かせるお金を用意しておくことです。
全てを現金で用意する必要はありませんが、送金できるように整えておきましょう。多くの銀行は海外送金にあらかじめの手続きが必要です。国外からの手続きは不可能であったり手間や余計な費用がかかる可能性がありますのであらかじめ留学前に送金ルートを確保しておきましょう。記事「誰でも使えるアメリカ留学生活の節約術15選+αを解説!」で送金の際の手数料を節約する方法を解説しています。

どこから金銭を得るかによりますが、もし奨学金での留学が選択肢になるのでしたらより条件の良いものを得ることでグッと金銭リスクを減らすことができます。特に国際的な奨学金は国内に比べて一般的に金額は多く、子ども手当や研究費/健康保険手当がつくなど充実しているものが多いです。奨学金に関しては「日本人が海外医学研究留学するための奨学金34選を一覧で比較!」でご紹介していますので参考にしてみてください。

投資で資金が増える仕組みを作っておくことも大事です。詳細はここでは触れませんが、例えば配当金が入っておくようにしておくだけでも将来の備えや安心につながります。とは国外に居住すると原則として取引が出来なかったり、口座を移す・口座を解約する必要が出てきたりします。この辺りは証券会社によっても対応が異なりますので各自で調べておく必要があります。

副業に関してはまず最初に認識しなければならないことはお持ちのビザで副業ができるか?です。明らかになった場合にはビザの停止になってしまう可能性があります。一方でパートナーのJ-2ビザであれば現地の就業は可能です。その場合はまず手続きを経る必要があります。

もし副業が可能な方はオンラインの医療相談など、合法に医師が遠隔で収入を得る手段が存在します。直接医療機関で仕事をすることに比べれば金額は抑えられがちになるものの、収入の下支えになりますのでそういった手を探すのも1つです。

B 生活費がかかる

まず転居になればその時点で一時費用がかかります。
こちらの記事「アメリカポスドクの給料と金銭事情」を参照にしていただければわかりますが、最低100万円は見ておいた方が良いです。

そして月々の負担(固定費)を考えたときに日本よりも負担が多いものはデイケアや医療保険が代表的なものです。特に日本の奨学金や無給(自費留学)の場合、大学や研究施設は家族含め医療保険をカバーしてくれないのでその負担はかなりのものになります。ただその場合現地の低所得者支援(例えばメディケア・メディケイド、デイケアの減額)が対象になる可能性があり、十分なリサーチが必要です。予め留学先のボスおよび事務に確認しておくと良いと思います。

なるべく出費を抑えるには以下の対策が考えられます。

  • 現地の低所得者用支援のリサーチ、使えるものは全て利用
  • 節約する(中古品の購入)
  • クレジットカードをお得なものに変える
  • お得なショッピングツールを駆使する

さまざまな手段がありますが、地域や収入の状況によりどう選択すべきかは異なります。
ネットでリサーチしつつ、現地のコネクションから情報を得るのもかなり重要です。

海凪
海凪

アメリカ留学中の節約術に関しては下記記事で詳しく解説していますので参考にしてください!

C 為替リスク

これはまさかの想定外のリスクでした。
留学開始時は確か1ドルあたり100円後半だったと記憶していますが、それがあっという間に1ドル140円近くまで…。これはつまり今の円資産がざっくり30%程度失われた計算になります。

もちろん今後アメリカで生活し続けるわけではない方は全資産の心配をする必要はありませんが、日本国内で円換算で留学助成金を得る方にとっては大きな打撃ですし、生活資金が足りなくなった時に日本円からドルに変換して送金する場合にも大きな損失です。。

このリスクを完全に防ぐことは不可能ですが、なるべく損をしない、という観点では以下の対処が必要です。

  • 事前に資金計画を立てておき、必要十分な量を最初に換金
  • なるべく給料以内でやりくりする
  • 修正しながら換金の回数を少なくする
  • なるべく手数料の少ない金融機関・サービスを利用

上記を見ると「あれ?【なるべく円高の時に換金する】んじゃないの?」と思った方もいるかもしれませんが、為替は予想できませんので実質不可能です。為替は予想ができませんので、素直に手数料を最小にしておくほうが確実に節約できます。

研究留学の収入と支出の実態を把握するには下記関連記事もご参照ください。

2. キャリアへのリスク

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医師の多くがキャリアへのリスクも気にされると思います。
ざっくり以下のようなリスクが考えられます。
ちょっと微妙なのもありますが(笑)。

  • 医局に席がなくなるリスク
  • 週休5日8時間労働が良すぎて元の生活に戻りたくなくなるリスク
  • 留学中に人が入れ替わっていて戻りづらいリスク
  • 臨床の知識や技術が失われるリスク

長く留学生活をした結果、「君に医局の席はない」となってしまった人を知っています。
反対に、長く留学し、その間に就職活動と実績を積み、他の医局に出世しつつポストを確保した人も知っています。あるいは留学を医局のコネと給料でいかせてもらっておきながら帰って早々に医局を抜けて開業してしまう人も…

どちらかというと医局の方が被害を受けている気もしますが笑、留学中は医局との距離を置きやすいので色々と考える時間があるのかもしれません(リスク?)。

これに関しては結局は「これからどうしたいのか」によります。留学は大学や研究施設への勤務にはプラスになると思いますが、臨床に専念したい医師や開業予定の医師にとっては「ちょっと箔をつける」「海外で生活」「規則正しくゆとりある生活をする」以上のプラスはありません。
そういう人はそもそも留学を希望しないかもしれませんが…。

また多くの場合、研究留学は「本来の人間の生活」を思い出させられます(?)
当直も当番もなく、(基本的には)自分のペースで仕事ができますので、あまりに忙しかった前職を考えたときに戻りたくなくなってしまうこともあるようです。
海凪はまだ留学中ですが、恐らく帰国後は「研究留学生活ロス」に悩まされるでしょう(笑)。

留学中は恐らくあまり気になりませんが、大学病院や専門病院は2-3年もするとかなり医師もコメディカルの人も入れ替わっているはずです。知らない人が多くなり、浦島太郎の気分を味わうことになりそうです。

海凪も現在進行形ですが、臨床の知識・技術がどんどん失われます。
点滴一本、抗菌薬一本処方しませんので、復帰してすぐ仕事ができるか非常に心配になります。
外科系の人は特に気になるんじゃないでしょうか。

キャリアのリスク管理はなかなか難しいです。
思いつく対処は「頻繁に連絡をとる」こと以外には思いつきません。
連絡先は自分自身がどうしたいかによりますが、お目当の復帰先+αに積極的に連絡することは復帰後をスムーズにしてくれるはずです。

キャリアを変更せざるを得ない状況になってしまった場合は「医師が研究留学に失敗したと感じたら?3つの理由とその対策19選について解説で対処方法を提案しています。

3. 留学先のリスク

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殆どの人はそもそも選択肢が多くないですし、人間関係のリスクをゼロにすることは難しいですが、少なくとも研究室のホームページやGoogle Scholar, PubMedなどから以下をリサーチしておくことが大事です。

  • 論文をどの頻度・回数で、どのくらいのIFの雑誌に投稿しているか
  • 実質の研究者(ポスドク、リサーチアシスタント、大学院生)は何人か
  • 彼らは頻繁に入れ替わっていないか
  • PI以外の研究者がファーストオーサーになっているか

ボスの方針によってはなかなか論文を出させてくれないところもあります。
例えば大きいジャーナルに乗せたいからそれにふさわしい分量と実験成果を求められたり、終わりがないので留学期間の最後になって「君も終わりだからそろそろ (論文を) 纏めるか」と言われたり。
自分の研究内容と直接関係のないボスの研究費獲得の申請書作成のためのPreliminery データを取得することを求められたり…。コネや前任者がいる場合このリスクはとても低くなるのでそれが最大のリスクマネジメントかもしれません。

その上で特にボス(=PI)とメンター(直接の指導役)との関係に注意が必要です。
例えいい研究室だとしても、ここが拗れてしまうとそれだけで論文が出せない、データを盗まれる、実験器具や薬を回してもらえないなど、Youは何しに研究留学へ?状態に…。
もちろん方針や考え方の違いはあるでしょうが、ボスが不正をしているのでなければ信念もそこそこにしておかないと大変なことに…。

4. 健康リスク

多くの留学では生活のリズムそのものは改善する医師が多いと思いますがそれでも要注意です。
以下のような健康リスクが潜んでいます。

  • リスクが顕在化する年齢
  • 変化する食生活
  • 慣れない生活・人間関係・言語によるストレス

簡単にできることは、留学前に歯科治療をしておく人間ドックを一回受けておく、などでしょうか。
あとはなるべく自炊に慣れておく、自炊の情報や日本食の情報を仕入れる・定期的な運動習慣を取り入れる、などが考えつきます。

5. 家族との関係のリスク

family

生活が多方面に大きく変化しますので、家族との関係にもリスクがないとは言えません。

  • 家族との距離が変化する(一人暮らしでも家族と同居でも)
  • パートナーのキャリア変更
  • こどもの幼稚園・学校の変更
  • 金銭に対する方針の違い

この項目に関しては正直人によりすぎて概説は難しいです。
ただ大きな生活の変化ですので、しっかりケアしていく必要があることは間違いありません。

実例では今のところ留学がきっかけ・原因で離婚した人は知りません。

まとめ:リスクはコントロール可能!!

色々書きましたが、ほとんどのリスクは事前もしくは留学中にコントロールが可能です。
より良い準備をしてより満足度の高い留学生活を目指しましょう!!!

もしリスクをコントロールしようとしても「失敗した」と考えてしまう瞬間は存在するものです。そんな方に向けては「医師が研究留学に失敗したと感じたら?3つの理由とその対策19選について解説」も参考になると思いますので是非ご一読ください。

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